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Dr. Smiling LAYLA (Phantom Dance II)

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Dr. Smiling LAYLA (Phantom Dance II)

word&music
by Jan


ドアを開けて 長い髪をなびかせ いつも通り微笑んで
淡いピンク 眼鏡の奥できらめく 光が僕を誘い込む
くだらない奴らとの日常を 忘れさせてくれるから

Hello, Dr. Smiling LAYLA すてきな笑顔だね
Hello, Dr. Smiling LAYLA いつものお薬を

どうぞ ここへ 肩の力を抜いて 椅子にかけて 目を閉じて
誰も 僕の心 理解できない さめた言葉 投げつける
知っているわ 耳もとのささやきは 地に舞い降りた天使のよう

Hello, Dr. Smiling LAYLA すてきな笑顔だね
Hello, Dr. Smiling LAYLA いつものお薬を

いつだって おさえこむこの気持ち 僕だけのあなたなら

Hello, Dr. Smiling LAYLA すてきな笑顔だね
Hello, Dr. Smiling LAYLA いつものお薬を

?

僕は診察室の椅子が好きだった.
柔らかすぎず,硬すぎないそれは,
遠い昔,僕が椅子になりたかったのを思い出させてくれた.
その椅子の横を通り過ぎる白衣の彼女からは,いつもラベンダーの香りがして
向かいの椅子に座って組むその細くて長い脚の白さは
僕の前頭葉を貫くのだった.

「大丈夫,何も怖がることはないのよ,さあ,何から話しましょうか?」

僕は携帯の話から始めた.
そう,携帯の着信がなる10秒くらい前から聞こえてくるノイズのことだ.

初めて気がついたときは,高くかすかな耳鳴りのように聞こえていたそれが,やがて周波数を下げ,音量を上げてくるにしたがって,意味を持った言葉に聞こえはじめたという話を,彼女はニコニコしながら聞いていた.

素敵な笑顔だった.

僕は,毎週のように彼女のもとをおとずれてその話を続けた.

徐々に他人の電話の着信前にも,言葉のノイズが聞こえるようになってきたという話もした.大概は他人が僕の悪口を言っているという類のたわいもないものだったが,彼女は微笑みを絶やさず,聞いてくれた.

様子が変わったのは,その言葉のノイズが黒い郵便船のことを教えてくれるようになったと話し始めたときだった.彼女は急に身を乗り出し,目を輝かせると,僕にくわしい話をするよう促し,帰り際にはいつもと違う薬をたくさんくれた.

「大丈夫,何も怖がることはないのよ」

彼女の言葉を信じ,僕は黒い郵便船について知っていることを話し続けた.注射も頻繁に打ってくれるようになった.話し終わると,以前に比べてずっと気持が楽になっているのに気がついた.そのうち,僕は診療中に夢中でしゃべっていると身体が浮くような感覚を覚えるようになった.彼女はそれを聞くと「治っていく途中にはよくあることよ」と言って僕をはげました.

それは8回目の診療の途中だった.身体が浮く感覚に身をまかせながら,ふと彼女の顔を見ると,左目の下あたりに小さな黒い点があるのに気がついた.いぶかしんで眺めているうちにその黒い点はみるみる大きくなっていき,彼女の顔を浸食して溶かし始めた.僕は,悲鳴を上げて椅子から転げ落ち,はいずりまわってドアへと向かった.やがてドアの前でパニックになっている僕の左肩にひんやりとしたものが触れた.振り返った僕は,もはやヒトの形をとどめていないそれがなぜか笑いながら話しかけてくるのを感じた

「大丈夫,何も怖がることはないのよ」

僕は自分の悲鳴がエコーする中,意識が遠のくのを感じていた
?
?
Hello, Dr. Smiling LAYLA すてきな笑顔だね
Hello, Dr. Smiling LAYLA いつものお薬を
?
??
そして僕は新しい世界を手に入れた.

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